若本規夫さん講演会~『声優発身体文化論』

130th同志社EVE 若本規夫氏講演会 レポート



        

・この講演会のテーマである『声優発身体文化論』について

若本

35年間声優をやってきましてね。声優から見た、人間観っていうか、今身体文化論って言う言葉が流行ってますけど。

結局ね、人間っていうのは、頭があって頭が指令を出して、色んな動きをしていくわけなんだけど。

じゃあ、頭がこうありたい・あぁありたい・こうしよう・あぁしよう、って言ってても体が動かない、その様に動いてくれないっていうのが、これが普通のありようなんだよね。

これは声優でもあるんですよ。声優でも、誰でもね。例えばあぁいう…イチローみたいな…玉三郎とかマイケル・ジョーダンとか…朝青龍とか、諸々、いますけれど。もちろん、バレエにしてもそうだけど。あぁいう人たちは一体、頭で考えて…体に命令して、こうやれって動いているのかって。おそらく、同時発令だと思うんだよね。同時発令。あるいは、体の方が先なんだろうね、多分。

そういう風になっていくと、どんな仕事でも面白いのかなー、と思うんですよ。例えば、その…ちょっと飛ぶけれども。シンクロナイズドスイミングってあるよね。あれも…日本のお嬢さん方、非常に健闘していて。あれ、いつもいただくのはシルバーだよね。シルバー。ゴールドは、どこが取っているのかって言うとね。ロシアでしょ。

これがなんなのかっていうことはね。つまり、技術的にはおそらく、ロシアよりも上回っている所もあるんだよね。でも、アートがないんだよね。アート…っていうのかな。クリエイティブなところでね、差があるんだよ。向こうは、バレエとか…それ向きの…魅せる、身体文化があるからね。だからその、絵でも音楽でも、結局こっちの絵があれで、こっちの絵が、ってのはあれは一体何だろな…って思うんだよね。音楽でもそうでしょ?

あと職人なんかも、職人芸って言われるよね。この職人さんがやってることと、この職人さんがやってること。

それから…卑近な例で言うと、服売場なんか行きますとね。まぁ、僕なんか気が小さいからね。こう…服を見てて、ふあぁぁーっとこう、プレッシャーが…店員が寄ってくるじゃない。

『(甲高く)これでしょうか~? これでございますね~。』

これが困るんだよ。逃げちゃうんだよ。でも、一流の販売員はそんなことしないんだよ。絶対に。この何ていうのかな…客にプレッシャーをかけないで、アプローチしてくる。あるいは、客が…こう…きた時に、フッっと出て行くっていうのかな。」

「…何ていうか。呼吸、っていうんですかね。そういうものがね…職場でもある。職人でもそうだし、販売員でもそうだし、営業マンでもそうだし、どんな仕事にいてもね。そういうことがあると思うんですよね。それでその…頭で考えた事を、体がどう使うかと言う所で、じゃどういう風に…身のこなしをね、していくかっていう事で、みんっっっな苦労してるわけ。

アスリートも、芸能の世界も、それから…もちろん、我々もね。あらゆるジャンルの人で、身のこなしって言うか、呼吸と言うものを…武道家もそうですね。柔道にしたって、剣道にしたって。あらゆる所に通じていく事だと思うんだけど。

あるいはまぁ、これから皆さんが就職試験を受けるときにね。これも呼吸なんだよ。…呼吸ね。呼吸をその、ふぁっ、と拒絶的に…例えばその…面接官辺りに、ふっ、と出すと、そこに壁が出ちゃうね。だから、彼の息を自分で吸い込んでいく、っていうかな。呼吸で自分を流していくっていうかな。こういう対流が生まれないと多分、その面接は上手くいかないであろうと思うんですよ。まぁ、これは僕の私論だけどね。そういう呼吸のあり方っていうのが、あると思うんですよね。」

「で、結局…僕らは、マイクの前で喋るんだけど。台本もってね。で、その…書いてある事をらしく読んでると、僕らは三次元の世界に生きている訳だけど、テレビなんかで聞こえてきたら、これは二次元になっちゃうんだよ。ぺらぺらぺら…ペラペラーって。なんだか…この作品のこの…声優はペラッペラじゃねぇのか?なんにもこねぇやー。

まぁ、舞台でもいいですよ。芝居でもね。なんか、一生懸命ドタバタやってるけど、なんっにもこない。勝手にやってろ!って、出て行くとかね。あるわけでしょ? つまり、三次元の世界を三次元たらしめているのは、四次元なんだよね。で、四次元って言うのは何かって言うと、目に見えない世界って言うのかね。目に見えない世界。

目に見えない世界って、じゃあなんなのか。本当に目に見えないからねぇ、それを称して四次元って…あるいは空、と言うね。空。空海の空。で、僕はそれをね、空気感だと思っている。空気感。空気って言うのは、目に見えない。空気感、あるいはその…空気伝染っていうかな。

そういうものを…声優自身が発信しないと、マイクに吹き込んだ時に…実際にオンエアされる時には二次元、ペッラペラね。だから、空気を入れこんでやる。吹き込んでやる。そうすると、四次元が…四次元の世界が三次元に入ってくるから、二次元のテレビに映ったものが三次元として、視聴者の前にくっきりと聞こえてくるから、あぁ…いい作品だなぁ…ということになると思う。

だからその、空気感っていうのは非常に大事なんですよ。雰囲気、ようするに雰囲気。その…結局人間って言うのは雰囲気で決めてるんだよね。この店と、この店、こっち行こーとか。全部雰囲気でしょ? …もっと分かりやすい例で言えば…空気伝染ってね。例えばここに、パッとパンチパーマでね、こんなヤツ入ってきてごらん? 物言わないんだよ、そこにポーっと立ってるんだよね。どういう風な、空気伝達、する?空気感染ね。これが、要するに四次元の世界なの。あ、彼らは別に四次元じゃないよ。でも、そういう風に、感じちゃうって訳なんだよ。それをね、例えば声優なら声優が、そのニュアンスで出さなきゃいけない。

ここがやっぱり、一つの空気の使い方って言うかね。呼吸の使い方っていうか……

まぁ、我々もそうだけど、アスリートもそうですね、100メートルのスタートの時に、彼らがあれっだけ神経質になるっていうのはね、呼吸だよ、呼吸。武道も呼吸。そういうことが、35年間の声優の生活をやってて、どうもこの辺に極意がありそうだな…と。で、まだまだ僕も、呼吸と言うものを、空気感と言うものを、使いこなしてはいないんですけれども。まだまだ。これからもっと使えるようになっていきたいな、と。

皆さんも是非ね、自分の呼吸、そして他人(ひと)の呼吸、間…その場を占める空気・雰囲気。これを感じ取れるね…感性っていうか。場の空気を感じ取れないって言う人は、どの職場行っても駄目ですよ。 なんかね、その空気を掴みながら自分は変えないで、その空気に乗っかっていけばいいんだよね。その職場の空気。自分を変えると、苦しいよ。変えられないから。

人間は変えられないのよ。この間もね、中学の同窓会に行ってきたんだけどね。まぁ…こう見ててもね。やっぱり立ち居振る舞い、その人の持っている空気っていうのは、もう…中学校のまんま。変わらない、人間。

だから、変えようとしないで。もう自分のスタンス…は、持ってて、その場に乗っかるって感じかな。あるいは、空気を変えようと思っちゃいけないんだ。で、乗っかれなかったら、引き上げればいいんだよ。ま、なんかね。変な話になっちゃったけど……そういう……声優発身体文化論でした。」

(司会 「ありがとうございます。もう、ここにいる学生さんだとか、皆さん本っ当に通じる、ためになる…」)

「だから良くね、見ててご覧。嫌いな人と…まぁ、上司でも何でもいいんだけど。…が来た時にね。その、同じ部屋になった時にね。自分の呼吸は止まってますよ。自分の空気をね、相手に入れないようにしてるんだよ。それで、相手の空気も吸わないように。これなんですよ。だから逆に言えば、その呼吸が変わることによって、上手くいくかもしれないしね。

 


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